敵を考えているうちは,すでに敵の下にいるに過ぎない。アップルの徘徊もそこから始まっていた。インテルとAMDの3番手ではなく,唯一の存在としての道。あとは,その2社が,今度はトランスメタを敵とするだけだ。勝負付けは,もうすんでいるのかも,しれない。
ゲートウェイ2000社とアメリカ・オンライン社は30日,発売を予定しているインターネット機器のCPUに,トランスメタ社のクルーソーを採用すると発表した。半年ほど前のCPUの供給不足の問題で,インテル社とゲートウェイの間には亀裂が生じている。今後,インターネット機器にフォーカスするインテルには,大きな痛手となった。
ゲートウェイは当然,ハードウェアメーカーだが,PCメーカーという呪縛からは逃れたいという気持ちがあった。そしてそれは,ほとんどすべてのハードウェアメーカーが持っているものだ。すなわち,インテルともMSとも関わりを持たなくてよいものをつくりたいという,自由への願望。そのための手段として,AOLとトランスメタはあまりにも高貴な存在,だったのかもしれない。いや,高貴という言葉が間違っていたとしても,インテルとMSから離れられる土壌ができてきた,という確信はあるに違いない。
そしてその確信は,トランスメタにうまく働いている。AMD社が真っ正面からインテルに勝負を挑み,数々の苦難を受け,正当な評価を得るまでにとてつもない時間を費やし,それでもまだ,インテルのブランドを崩せずにいる。だが,トランスメタは,その勝負の無意味さを心得ている。インテルがまだいる世界を壊すには,別の戦略が必要だということを知っている。その世界でオンリーワンとなれば,勝負はつくのだ。
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